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現在からの視座
坂本 実央 Mio Sakamoto
2010年度 卒業制作 「飛広告船」

《飛広告船》2010
何を表現したのか、どういう思いを込めたのか、ということよりも、制作過程そのものが大切な作品、と今改めて思っています。
当時、日本文学科が所蔵していた、大量の新聞資料を整理しながら、それにできる限り目を通し、各時代の気になった記事や広告を素材にしています。原本を切り抜くわけにはいかないので、もちろん全てコピーして。ベースとなる飛行船も、骨から全て図面を引いて、紙で制作しました。
それなりに効率的に作業を進めようと、様々な道具や機械を駆使していたつもりですが、やはり気の遠くなるような制作現場でした。飛行船ができてからも、空に浮かべないことには完成しないので、展示の手法や空間の作り方にも、かなり苦戦した記憶があります。
とある先生に「君のやっていることは、いつもすごく遠回りだけど、それがいいね」と言われたことを今でも覚えています。その当時は、自分は無駄が多い人間なのかぁ、と少し残念に思っていました。
今でも少し思っていますが、こういう回りくどい工程を繰り返すことで、俯瞰して見えてくるものもあるだろうし、おそらく納得もできない、そして何より、よく頑張ったなと。昔の自分を認めようと思います。
一方、鑑賞者に求めていることは特にありません。
ぼんやりと眺めていただけたら幸いです。
今は、自分自身も一鑑賞者として、ただぼんやりと眺めることができそうです。
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