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現在からの視座 

奥野 恵理 Eri Okuno

2013年度 修了制作 「the rainy season」、「grow」

《the rainy season》.jpg

《the rainy season》2013

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《grow》2013

 「制作時間はどれくらいかかってるの?」これは大学時代に私の作品に対してよく聞かれた質問です。

 隅々細部に至るまで徹底して描き込み重厚感を出すため幾重にも絵の具を塗り重ねた当時の作品は、実際のところ大作となると3か月以上かかることがほとんどでした。当時は作品に対して画面の完璧さを求める意識が強く、満足いくまで丹念に筆を加えていました。学生という立場を最大限生かし作品をなんとか理想に近づけようと時間の許す限り夢中で制作していた事が思い出されます。この作品にはまだまだ未熟さや稚拙なところはありますが画面から当時の情熱が伝わり胸が熱くなってきます。

 またこの作品は私にとって他人から「この絵が欲しい」と言っていただけた最初の作品です。突然の申し入れに驚きましたが自分の絵が人の心を動かす事ができた事に感動し作家としての喜びを初めて味わった作品です。

 あれから年を重ね、地元での作品制作や展覧会、イタリア留学などを経験する中で私自身の作風も幾度か変化してきました。しかし寝食も忘れ全力で制作に没頭していた当時のこの作品はまさに私の原点です。

そして今でも私の新たな作品を生み出す大きな原動力となっています。

尾道市立大学 芸術文化学部 教授(油画コース)

小野 環 コメント

 

奥野さんは修了後、故郷の宮崎に帰り制作活動をしていましたが、その後、宮崎県の第23回留学賞を受賞し、フィレツェに1年間留学していました。その1年間の留学の最後、新型コロナウイルスの影響で、帰国が延期され、この原稿はちょうどイタリアから戻ってくるタイミングでの依頼となりました。6月18日に帰国して入国後PCR検査を受けた結果陰性だったので、現在空港近くのホテルに14日間の隔離措置の為滞在中に書いてくれました。

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