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現在からの視座 

山梨 千果子 Chikako Yamanashi

2006年度 修了制作 「法隆寺 金堂旧壁画 第十一号壁 (部分) 普賢菩薩像 模写」、「ナツしたく」

《法隆寺 金堂旧壁画 第十一号壁(部分)普賢菩薩像 模写》.jpg

《法隆寺 金堂旧壁画 第十一号壁 (部分) 普賢菩薩像 模写》

2006

《ナツしたく》.jpg

​《ナツしたく》2006

「法隆寺 金堂旧壁画 第十一号壁 (部分) 晋賢菩薩像 模写」

 

 11号壁を選んだ理由は、ゆったりと象に揺られるお普賢様の御姿がとても魅力的に感じたからです。腰つきがなんとも良いですし、画面のまとまり方やバランスも整った壁面だと思っています。

実際法隆寺へ行くと11号壁はお堂へ入って右奥の端っこに位置していて暗いうえに手前にお像があるため全く見えません。他の壁面と比べ状態も決して良い方でなく、地味さもあってか資料写真も多くありませんでした。模写するにあたって法隆寺はもちろん、O先生の模写や、愛知や広島の大学の模写作品を見学させていただき、探り探り制作を進めていった記憶があります。

 

 制作中の思い出といえば、私は何より墨を摺る時間が大好きで、他のメンバーより前にアトリエに来て30分かけて墨を摺っていました。5月の爽やかな陽気と墨の匂いとアトリエで飼っていたセキセイインコの若干うるさい囀りを聞きながら一人の時間を満喫していました。墨を一本使い切ったのもこの時で、油煙墨から松煙墨に変えたら色が違っちゃったのは先生に内緒です。そしてもう時効です。

 

 古典模写をしていた半年間は印刷物がドットに見えるくらい眼を酷使し、本当にがっつり模写中心の生活を送っていました。院生のあの時じゃないとできなかった特別な時間でした。

「ナツしたく」

 

 私は旅先でモチーフを見つけることがしばしばあります。風鈴もたまたま夏休みの旅行先で見つけ直感でこれだと決めました。大画面に小さなモチーフを埋め尽くすのは大好きです。修了制作は10月1日から制作に入ると決めていたので、それまでに題材作りや小下図を準備する必要がありました。卒業制作の時は春に題材が決まっていて、どう描くか熟考する時間がありましたが、修了制作は夏になってもちっともテーマが決まらず焦っていたのを覚えています。

 1月の研究会にて某大先生からもっと軽やかに・風を感じるようにとご鞭撻いただいたのは、未だに何を描く時にも思い出します(笑)。修了制作に限らずですが、過去に描いたものは今観ると恥ずかしいし、あちこち描き直したい点がいっぱいです。

この場をお借りして、縁あって大学院のアトリエで飼われていたセキセイインコ(名ビビリ)は2年間、共にあのアトリエで過ごしてきました。その後、後輩様様が引き続き世話をしてくれたことをここで感謝します。

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