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現在からの視座 

酒井 龍一 Ryuichi Sakai

2017年度 修了制作 「Forest,Meal,Park」、「Gulag,Family,Window」

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《Forest,Meal,Park》2017

《Gulag,Family,Window》.jpg

《Gulag,Family,Window》2017

 これらの作品を描くにあたって当時の私は、記憶のような曖昧なイメージを表面的に絵にしたら面白いのではないかと制作していた。その原点に、海外に旅行に行った時に、地下鉄の壁にポスターが幾重にも貼られては剥がされ、残った断片が混ざり合い、ひとつの複雑なイメージを作り出していたのを見て、妙にリアルに感じたからだった。今、自分が見ているモノや記憶は、そのモノが持つ色々なイメージの中の一面に過ぎず、そういう風に表現してみるのも面白いだろうと考えたからである。ただ、今思い返してみると、単純にその複雑に絡み合ってできたイメージが美しかったからだと思う。

 この二つの作品は、「家族」をテーマに、その当時に強く記憶に残ったスナップ写真やイメージを複数の和紙に描いては剥がしたり重ねたりして制作した。正直に言えば、この作品を記録していた写真も手元から無くなってしまっていて、すっかり忘れていた。だが、久しぶりに、この絵の中に描かれているイメージの断片を見た時、その当時のことや考えていたことなどが色々と紐づいて想起されることが、すごく個人的ではあるが今の方がしっくりきてなかなか興味深かった。

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